ASEAN・中国、貿易の新時代へ!10月にFTA3.0承認で経済圏が大変革か

ASEAN・中国、貿易の新時代へ!10月にFTA3.0承認で経済圏が大変革か

ASEAN・中国が10月にFTA3.0承認

ASEANと中国は、2025年10月に開催される首脳会議で、ASEAN-中国自由貿易協定(ACFTA)3.0の承認を目指しています。この画期的な合意は、先週クアラルンプールで行われた第58回ASEAN外相会議で大きな進展を見せました。2000年に誕生したACFTAは、2010年までに世界最大級の自由貿易圏へと成長し、貿易品目の90%以上で関税が撤廃されてきました。

深化する協力関係と貿易の軌跡

ASEANと中国の協力関係は1991年に始まり、2021年には「包括的戦略的パートナーシップ」へと格上げされました。この強固な関係を背景に、両者間の貿易額は目覚ましい伸びを見せ、2024年には7,709億4,000万米ドルに達する見込みです。ACFTA 3.0は、2024年10月に9回にわたる交渉を経て大部分の合意が形成されました。今回のアップグレードでは、デジタル経済、グリーン経済、サプライチェーンの連結性といった、現代経済の主要な柱となる9つの新たな章が追加されています。

不確実な時代における自由貿易

このACFTA 3.0へのアップグレードは、広大な統合された地域市場への「玄関口」となると位置づけられています。世界経済が不安定な状況に直面する中で、今回の合意は自由貿易と開かれた協力こそが、困難を乗り越えるための強力な手段であることを示しています。2025年末までには正式な批准と署名が行われる見込みであり、これにより両地域のパートナーシップは一層強固なものとなり、ASEANと中国の関係は新たな高みへと引き上げられるでしょう。

この協定は、開放性、包括性、そして相互利益への明確なコミットメントを示しており、今後の地域協力のモデルとなる可能性を秘めています。特に、デジタル経済やグリーン経済といった革新的な分野が組み込まれたことは、将来的な経済成長とサプライチェーンの回復力強化に大きく貢献すると期待されます。この動きは、保護主義の台頭する国際社会において、多国間協力と自由貿易が引き続き重要であることを示す力強いメッセージとなるでしょう。

日本は戦略的な対応が求められる

ACFTA 3.0の承認は、ASEANと中国の経済関係の深化を示すものであり、日本にとっては、この地域の経済秩序の変化に適応し、自国の国益を最大化するための戦略的な対応が求められる局面と言えます。

1.ACFTA 3.0の詳細な分析と情報収集

  • 新規分野の徹底検証: デジタル経済、グリーン経済、サプライチェーンの連結性といった新たな章の内容を詳細に分析し、日本の企業活動や競争環境にどのような影響があるかを精査する必要があります。特にデジタル貿易におけるデータ流通やデータローカライゼーションに関する規定は、日本企業のビジネスモデルに直結するため、入念な確認が必要です。
  • 関税・非関税障壁の動向監視: ACFTA 3.0が既存の関税に加え、非関税障壁にどのような影響を与えるか、また中国市場へのアクセスがどう変化するかを継続的に監視します。

2.既存の経済連携枠組みの最大限の活用と強化

  • RCEP(地域的な包括的経済連携協定)の活用促進: 日本、ASEAN、中国を含むRCEPの枠組みは、既に多角的な経済協力の基盤です。RCEPの円滑な実施を促進し、その中で日本企業の競争力を維持・強化するためのルール作りや運用に関与していくことが重要です。ACFTA 3.0がRCEPの既存ルールに与える影響を評価し、整合性を保つよう働きかけることも求められます。
  • CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の推進: CPTPPは、高い水準の貿易・投資ルールを持つ協定です。日本は引き続きCPTPPの拡大と、その高水準なルールが地域全体のスタンダードとなるよう推進することで、ACFTA 3.0による影響を相対化し、バランスを取ることができます。特にデジタル貿易や知的財産権など、日本が重視する分野での国際的なルール形成を主導します。
  • ASEAN各国との二国間経済連携の深化: ASEAN各国との既存の経済連携協定(EPA)や投資協定をさらに深化させ、二国間関係を強化します。特定の国との間で、ACFTA 3.0ではカバーされない、あるいはより高いレベルでの協力を実現する可能性があります。

3.新たな協力分野での戦略的連携の強化

  • デジタル経済・インフラ協力: ASEAN地域におけるデジタルインフラ整備やデータガバナンスの枠組み構築において、日本が主導的な役割を果たすことで、信頼性の高い「自由で開かれた」デジタル空間の形成に貢献します。
  • グリーン経済・脱炭素協力: ASEAN各国の脱炭素化目標達成に向け、日本の先進技術や資金、知見を提供し、グリーン分野での協力を強化します。これは、環境保護と同時に、新たなビジネスチャンスを創出する機会でもあります。
  • サプライチェーンの多様化と強靭化: アメリカと中国の対立が続く中で、日本はASEAN各国と連携し、特定の国に過度に依存しない、強靭なサプライチェーンの構築を進めるべきです。これは、ACFTA 3.0による中国との連携強化と並行して、リスク分散の観点からも重要です。

4.地政学的なバランスと対話の維持

  • ASEAN中心性の支持: ASEANが地域協力の中心であり続けることを支持し、その自律性と中立性を尊重する姿勢を明確にします。
  • 多角的かつ透明性のある対話の維持: 中国を含む関係国との間で、貿易・経済問題だけでなく、地域安全保障やグローバルな課題についても率直な対話を継続し、相互理解を深める努力を怠らないことが重要です。

参照元

ASEAN, China set to approve landmark ACFTA 3.0 in October